濡れない紫陽花
 
僕は、硬直したようにその場から動けなくなった。



(嘘だ。)


そう思った。


だって、ちゃんと避けていたし。

だけど、美雨は僕の彼女だ。




ぐるぐると、痛む思考や過去が頭をめぐる。




ざあざあと、雨の響く廊下で、僕はもう動けない。







また、保健室から声が聞こえる。

女の先生と、美雨のやり取り。




『生理の予定日から、もう10日もずれていて…不安で眠れないし、食欲も…』






そうか。

そうだったんだ。


美雨が、具合が悪いのは、僕のせい。






僕が苦しめたのに。

心配を押し殺していたなんて。


 
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