濡れない紫陽花
 
僕は、逃げ出した。




保健室から立ち去るその足で、昇降口に向かって。

いつも2人で入った傘に、一人で入って。



高校から走って逃げた。





少しでも速く、速く、速く。

(逃げたかったんだ。)







ざあざあと、強い雨が降りしきる。



そういえば、こんなに強い雨なのに、今朝の登校時間は雨が降ってなかった。




美雨は傘を持っていないかもしれない。


帰りはいらないんだから。









傘、無くしてごめんね。



(何もかも、奪った。)


 
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