濡れない紫陽花
全員にプリントを配ると膨大なプリント枚数になるからか、クラス替えの発表は大きな紙での張り出し方式。
張り出しのしてある昇降口に向かって、胸のポケットからメガネを取り出す。
―「あれ…?葉季、メガネかけるの?」
正門からついてきた一人が、不思議そうな顔をする。
「春休みの間から、コンタクトの調子悪いんだ」
―「そうなんだぁ。メガネ似合うね!なんか、髪もちょっと伸びた?大人っぽくなってる気がするー」
「1年が幼いみたいにゆーなよ」
口を尖らせて見せると、相手はけらけら笑う。
ふう、と息を吐き、改めて張り出しを見ると、自分の名前は案外すぐに見つかった。