濡れない紫陽花
結局僕は――
自分が一番可愛いんだ。
あんなに愛したのに。
あんなに大切だったのに。
結局、一番可愛いのは自分で。
逃げ出すほど守りたかったのは――
(君じゃなかった)
制服が手の中でぐしゃぐしゃになっている。
この服は一番彼女の温度を知っている。
一緒に過ごした、あの時も、あの時も――
いつも制服だったよね、僕ら。
過ぎ去った日々が、棘のように突き刺さる。
刺さるたび、その痛みが愛おしくて僕は泣いた。
(枯れるまで、泣いた)