濡れない紫陽花
闇雲に、ただ昇降口へ向かった。
どこでもいい、美雨を探さなくちゃいけない。
そう思った矢先。
保険医が、僕を呼び止める。
―「美月さんの事で話があるの」
それは、とても簡潔に述べられた。
―「美月さんから昨日、女子高へ転校すると連絡が入ったそうよ。理由を知っている人はほとんどいないわ。私と彼女と、たぶん逃げ出したあなた」
―「遅れることなんてよくあるのよ。だから思いつめないでと言ったのに、転校するなんて。もう転校は決まってしまったことだけど、せめて彼女の中の問題くらい、ちゃんと解決してあげなさい」
保険医はそう告げて、僕を置き去りにしていった。
僕が君を置き去りにしたように。
ごめんね。
ごめんね。
ごめんね。
(君の痛みを見て見ぬフリをして)