濡れない紫陽花
そのまま、僕は美雨をいつも送っていた道を歩いた。
美雨の家に向かって、続く道を。
隣に君はいない。
涙が目いっぱいに溜まった。
20分程歩いたところで、紫陽花に囲まれた道へたどり着いた。
しとしとと降る雨を受けた紫陽花は、この間見たときよりも少し弱々しく見えた。
もう満開の時期が去ったのだろう。
これから葉だらけになって、来年まで眠るのだ。
この道の終わりまで歩いて、角を曲がれば、君の家なのに。
たった20メートルの距離が歩けない。
あの角を曲がれない。
たった20メートルの距離が、遠い。