濡れない紫陽花
 
よくよく見ると、美雨の前髪は少し伸びていて――

ハンカチを持つ手の爪は、綺麗な色が塗られている。

着ているのは、転校先の女子高の制服。

少しずつ、知らない美雨が、そこにいた。







「美雨は、大人っぽくなったね」





やっと、落ち着いて話せた。

美雨はそんな事ないよ、と言い、くすっと笑った。



(どうして笑えるの)


(僕は君を捨てたのに)





美雨が僕の手をひいて、また紫陽花の道を戻り歩く。


「葉は…去年私が具合悪かった理由、知ってる?」



ぐさり。

杭が突き刺さったように胸から痛みと苦しみが血のように流れた。



「…うん、知ってるよ。だから、逃げたんだ…」


(君を、捨てて)



 
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