濡れない紫陽花
(いまのも、聞こえてたよね)
目も胸も、焦げきって、焼け爛れていた。
それなのに、虐めるように彼女は僕で遊ぶ。
「みんな行っちゃったね。私たちもいこうよ」
僕の腕を引っ張り、連れ出そうとする。
(無邪気な顔で、確信犯でしょ?)
雑誌に載るようなモデルより綺麗な顔で、にこにこ笑いかけて。
そのやらしい唇で、人を飢えさせるのが趣味?
(そうやって、遊ぶのがすきなんだね。)
解っていながら、僕は彼女をすきになってしまいそうだった。
彼女に、飲み込まれてしまいそうだった。
その感覚が、じりじりと迫ってくる。
それがたまらなく嫌で、逃げ出したかった。