濡れない紫陽花
「ねぇ、行こっ」
彼女が笑うと、睫毛まで長いことに気付かされる。
沢山の武器を持って。
僕なんかと遊んでる場合じゃないよ。
焼け焦げた目も胸も、砂のように渇いている。
水が欲しい。潤って、溺れるほどに。
美しい雨が欲しい。
だからみんな、この手に乗って、君を求めるんだろう。
けれどきみは、その手の上で、決して溺れさせてはくれないね。
「僕はいい。疲れたから、始業式はサボるよ」
腕を握る、彼女の手を退ける。
「ひとりで、行っておいで」
言えてよかった。
そう思った。