濡れない紫陽花
 
なのに。

話はおかしな方向へ進もうとする。



「じゃぁ、私もここに居ていい?」


今度は真剣な目をして、長い睫毛で瞬きをする。

こぼれそうな瞳は、ガラスで出来ているかのように綺麗だった。




「……どうして?」


どうして僕にかかわるの?

どうしてそこまでして、僕なの?



遊ぶためのおもちゃ、君なら沢山見つかるよ。


(僕で、遊ばないで。)


そう思って、問いかけたのに。

しばらくの間黙った彼女が返してきた言葉は、あまりにまっすぐで。







「……………あなたに、一目惚れしました。あなたの彼女、私じゃダメですか…?」



「ぇ…っ?」




彼女の頬が赤い。

耳まで真っ赤になっていて、それは白い肌によく映えていた。

 
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