【完】スマイリー☆症候群
「続いて、MVP選手の発表に移ります」
その一声に、一瞬にして静かになる会場。
それはきっと、皆MVPが誰なのかという興味と期待からなのだろう。
ギュッと拳に力を入れ喉を鳴らした俺は、そっと耳を澄ました。
「MVP選手は……」
ドクドクドク、と心臓は高鳴り、会場全体は緊張感に包まれる。
「2年5組、山田棗(ヤマダ ナツメ)くんです!」
発表と共に、一気に山田に視線が集う。
それは皆同じ、温かい視線だった。
“山田が今年のMVP”
それは、誰1人として文句ない、満場一致で納得の結果だったのだ。
「山田、お前ぇやるじゃねーか!」
「おめでとう、君は真の英雄だ」
「悔しいけど、お前は間違いなくMVPに相応しい男だったぞ」
「清水、植木、望月……お前等……」
直ぐ様山田の元に駆け寄る俺達3人。
その時の山田の瞳は、気のせいかほんの少し輝いているような気がした。