【完】スマイリー☆症候群
「これ、あんた達にって笑佳と一緒につくったんだけどさ、受け取ってくれない?」
そう言ってスッと差し出された犬塚の手には、赤い紙袋がある。
「何だ、これは……」
「その、いつもあんたには迷惑かけてるから、たまにはって思って」
少し頬を染めて言う犬塚に、暫し硬直する俺。
いつも迷惑をかけているのは、俺だというのに……。
「ありがとう、これは大切にいただくぞ」
心の底から感謝を込めて言ったつもり、だった。
「プッ……あんたって本当」
なのにそう、何故か犬塚に笑われてしまったのだ。
む、おかしいな。俺はまた、何か変なことを言ってしまったのか?
「清水くんも、良かったら受け取って?」
「み、宮永……」
宮永はニッコリと微笑むと、清水に黄色い紙袋を差し出してみせた。
「あ、ありがとな!」
――……
「じゃーね、植木くん、清水くん」
宮永と犬塚は小さく手を振ると、奥に姿を消していった。