【完】スマイリー☆症候群
「清水、貴様俯いてどうした」
何故か下を向いて黙ったままの清水が、気になって仕方ない。
「……清水? 具合が悪いのか」
何度尋ねても返事がない。
これは、本当にマズイ事態に陥ったのでは。そんな考えが頭を過った時だった。
「植木……。何だこの胸の奥の高鳴りは! 実に嬉しすぎるぞ!」
今まで沈黙していた清水は、それを思わせないかのように強く箱を胸に抱き、ニヤニヤと顔を緩める。
それから、奴は雄叫びを上げると、暫くの間グランド中をはしゃぎまわった。
――……
かじかんだ指を、そっと擦り合わせる。
長時間冬の風にさらされた身体は、冷たく冷えきっていた。
しかし、何故か心はじんわりと温かくて。それは、心を包むような、そんな優しい温もりだった。
「そろそろ帰るか」
決戦のあった大地で。
夕日のオレンジに包まれながら。
「じゃーな。植木」
「ああ、また明日」
激闘だったこの日は、遂に終わりを迎えたのだ。