【完】スマイリー☆症候群



「マジで!? じゃあさ、どれがいい?」


じっと清水くんに見つめられ、私は直ぐ様辺りを見回す。


「え、うーんと」

「あ、これなんてど……」


目に入ったストラップを手に取ろうと、すっと伸ばした腕。

……その瞬間。


「「あっ」」


気づけばそれは隣の手と同じ方向に向かっていて、不意に指先が軽く触れる。

咄嗟に出た声が、低いそれと綺麗に重なりあってハモった。


「ご、ごめんっ」

「ううん! わ、私こそ」


お互いに焦ったように声を上げると、瞬時に手を引っ込める。

ちょっと触れただけなのに、何でだろう。

その部分が、他よりも少し熱を帯びたように熱い。


「宮永も、これがいいの?」

「へ?」


“これ”

清水くんは、遊園地のマスコットキャラの愛らしいネコのストラップを手に取ると、私に見せながら尋ねた。


「……うん。目に入った瞬間、すっごく可愛いなーって思って」

「そっか。俺もさっき直感で、これだ! もうこれしかない! って思った」


なんて大袈裟に言いながら、清水くんは笑う。

その笑顔を見ていると、心が和んだような気がした。
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