【完】スマイリー☆症候群



初めてのことだった。

漫画やテレビでは、勿論見たことがある。

しかし、実際に体験してみることになるとは思ってもみなかったんだ。

気付けば俺の額には、少し汗が滲んでいる。

ーーというのに。


「……あのさ。それ、マジで言ってんの?」


まるで、異物を見るような犬塚の視線。

何故そんな顔をしてるんだ。


「勿論だ」


俺の声を聞くや否や、彼女は、はぁーっと重く息を吐ききる。

そして思い切り空気を吸い込んで、口を開いた。


「そのハートのシールは何だって言うの!?」

「ハートは心臓をかたどって出来たマークだ。恐らくそれは俺の心臓を奪うという意味だろう」

「じゃあ、女の子が書いたみたいなこの字は!?」

「今時、字などいくらでも工作出来るからな。きっと、俺を騙すための罠に決まっている」

「あんた、そんな命狙われるようなこと仕出かしたの?」

「いや、それはない。そこだけが気がかりなんだ」


それにしても、厄介な敵だ。

きっと、凄い腕を持っているに違いない。


「何やってんだ?」

「!?」


不意の問い掛けに驚く。

振り返ると、漸く学校に着いたのか、鞄を肩に掛けたままの清水の姿があった。






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