【完】スマイリー☆症候群
syndrome4

スマイリー☆症候群☆椿side




――ジリ。


ほんのりと薄暗く染まった空の下。

とある場所へと到着した私は、しっかりと砂利を踏みしめる。


「あ、いたね」


そう隣で小さく声を零すのは、親友である宮永笑佳。

私は彼女と共に茂みに身を潜め、ある動向を窺い始めた。

ドクン、ドクン。

拍動が大きく刻まれる。

……ああもう! 何でこんなに緊張するのよ。

視線の先には、一組の男女。

ショート丈の髪をした小柄な女と、いかにも真面目な顔をした無愛想な男だ。

それは所謂、告白の現場。

何故私が今こんな悪趣味ことをしているのかというと、それは……。


「ねぇ、何か植木くん、すごい剣幕で喋ってるよ」


そう心配そうに述べる彼女に、“強引に”誘われたからだ。


「……ったく、何やってんのよアイツ。女の子怖がってんじゃない」


会話ははっきりとは聞こえてこなかったものの、表情からそれを読みとった私は、呆れて溜息を吐いた。





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