ウソ時々ホント【短編】
「も…そーゆー冗談は本当、勘弁…」

今だから言ってしまおう。気持ちだけは…
断られても、ここまでしてしまったのだから、言おう。

軽く息を吸う。

蒼が言葉を紡ぐよりも先に、腕の中にいる公佳が口を開いた。


「ごめん」

「…え?」
「やっぱり私…汚いんだよ」


公佳が自分の事を話す時の、いつもの台詞。

「嘘じゃ…ないの。なのに、私、いつも逃げてばかりで…また…っ」

蒼への申し訳なさからか、自分の弱さが悔しいのか、公佳の声は、涙に濡れていた。
細い肩が、小刻みに震える。


「公佳」
「ごめんね…忘れて」


肩を包む腕に力がこもる。

「公佳は綺麗だよ」

蒼自身が思ったよりも、その声は強く、穏やかだった。

「公佳の醜い所も、頑張ってる所も、ずっと隣で見てきたんだ」


ゆっくりと、彼女は涙に濡れた顔を上げる。




「ちゃんとわかってるから。それでも俺は公佳が好きだよ」
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