ネモ的、SFファンタジー短編集
「なら、用件は早い。あの猫にはこの戦争を終わらせるだけの力がある。ワクチンさえ作れば、我々アトランテは虎神に和平交渉を持ちかけることができるのだ。その重要性を分からないでもあるまい?」
まさか、それほどの判断力が無い男でもあるまいよ。
いくらお前が素人だとしても・・・。
「ふぅ~」
しかし、アルクはそんなサクラの言葉を聞いて、ポケットからタバコを取り出す。
火をつけて一息。
そして・・・。
「逆に・・・虎神国民全員を死滅させることも・・・できますよね?」
紫煙とともに、にやりと笑った。
ぐっ・・・やはりそこに付け込むか?
「そんなこと、するはずが無いだろう?」
「根拠がありません。」
なんという屁理屈。
そんな言葉を言い出したら、交渉なんて意味が無くなる。
「それを言い出したら、君の提案だって根拠が無いだろう。我々だって馬鹿じゃない。いくら敵国とは言え、虎神国民を全員死滅させるようなことするものか?」
「だが・・・可能であることは確かだ。」
言うと、アルクはまた笑みを深くした。
底の見えない・・・下手をすると、吸い込まれてしまいそうになるほどの深い深い闇に包まれた笑顔。
人の笑顔がココまで怖いと思ったことは無い。
この男・・・この笑みを作れるまでに、どれほどの死線を潜り抜けてる?