ネモ的、SFファンタジー短編集

 一瞬で理解できた。


「もし動けば、このカプセルが破裂してあっという間にウィルスが蔓延する。それが、何を意味するか分からないでもあるまい。」


 だからって!


「お前・・・本当に人間か?」


 そんな言葉しか出なかった。


「誘拐したお前たちが悪いのだ。娘がいるから付け込まれる。戦争を終わらすという大儀のためには、仕方が無い行為だった。」


 だからって、実の娘を殺すことないだろう!


「てめぇ・・・。」


 アルクの声が耳元でなりびく。


 怒りで、トリガーにかかる指に力が入り、今にも撃ってしまいそうだ。


 しかし、悔しいが・・・・本当に悔しいが、この場でアイツを撃つことができない。


 撃てば、ウィルスが蔓延する。


 自分たちだけではなく、本当に全世界の人間が死滅してしまうかも知れないのだ。


「・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・・・」


 アルクと海人が拳銃を構えたまま、キラだけが涙を流しながら、その場で崩れそうな身体を必死で支えながら、無言の間が流れる。


 やがて、バタバタと聞こえてくる大量の足音。


 外にいた護衛部隊が、進入してきたのだ。


 しかし・・・何もできない・・・。


 菜々が目の前に倒れているのに・・・大量の侵入者が家の中に入ってきているのに、何もすることができない。


 アイツが持っているカプセルのせいで・・・。


 アイツが持つ、悪魔のような・・・いや、実際に悪魔と同等の心のせいで・・・。

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