ネモ的、SFファンタジー短編集
「海人・・・アルク・・・・。」
先ほどまで嗚咽だらけだった、キラの声が響く。
顔は上げない。
血だらけの顔のまま、うつぶせて、菜々だけを・・・もう、動かなくなった彼女の死体だけをじっと見つめている。
だけど、その姿は他の誰よりも、二人の男たちよりも、怒りに満ちていた。
そして・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・負けたら・・・・・・・・承知しない・・・・。」
殺気ある声。
怒りに震えながらも、何もできないことが心から悔しいといわんばかりの声。
「・・・・・・ああ。」
それに対して、海人が答え・・・。
「・・・・・分かってる。」
アルクも答えた。
二人の男が、少女の死体を背に歩き出す。
一人は、その優れた知性と、知識を使い、ありとあらゆる情報を遮断するため。
一人は、その優れた感性と、身体能力を使い、すべてを破壊するため・・・。
お互いに・・・・一人の少女を見殺しにしたという罪を背負い・・・・・・・・・。