ネモ的、SFファンタジー短編集

「・・・・・・一応、ワクチンだ。今のうちに渡しておく。」


 リビングから出て、それぞれの向かうべき場所に向かう途中、アルクから一本の注射器が手渡される。


 いつの間に、作っていたのかわからないが、今は必要なものだ。


「・・・・・・・。」


 海人は、それを無言のまま、受け取り、ポケットにしまう。


 注射を打つのは、移動しながらでもできる。


 今は、そのときではない。


「基地のネットワークは俺がすべて遮断する。救難信号も出させない、増援も呼ばせない。その後の情報操作もできる限りで何とかしてやる。好きなだけ暴れて来い。」


 海人とアルクの目線はあわない。


 顔も見えない。


 だけど、お互いに同じものが見える。


 ・・・同じものを見ている。


「・・・ああ・・・。」


 海人の短い返事。


 その言葉にすべての意味をこめる。


 任せろ。


 俺を誰だと思っている?


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