ネモ的、SFファンタジー短編集

「きさまぁ!」


 怒りで我を忘れたのか、サクラは、倒れこんだ姿勢のまま半身だけ起こし、銃を乱射してくる。


 しかし、そんなパニック状態で、まともに当たるはずがない。


 11発残っていた弾は、海人の頬をかすめ、肩をかすめ・・・残りはまったく明後日の方向に飛んでいってしまう。


「あれ・・・?」


 もう弾が残ってないことに焦りを感じたのか、既に弾切れになった拳銃のトリガーを必死に引く。


 しかしカチャカチャと音が鳴るだけで、弾は出てこない。


 その隙を海人は見逃さない。


「ぐっ!」


 回し蹴り。


 サクラの脳天にクリーンヒットした。


 あまりの衝撃にサクラは再度、床に倒れこむ。


 その反動で、彼のポケットから、あのときの銀色のカプセルが零れ落ちた。


「あ・・・。」


 彼がそんな声を上げるのも無理はない。


 必死に手を伸ばし、落ちたカプセルを回収しようとするが・・・。


「こんな物のせいで・・・・・・。」


 海人の方が、早かった。


 こんなもののせいで・・・。


 こんな陳腐な下らないもののせいで・・・・アイツは・・・・・・・菜々は・・・・・・・・。


< 176 / 187 >

この作品をシェア

pagetop