ネモ的、SFファンタジー短編集
秋の夕暮れはとても肌寒く、コートを着ていないと、凍えてしまいそうだ。
雪が降るのももうすぐだろう。
そんな寒い秋空の元、二人の男と、一人の女性。そして一匹の猫が墓標の前に立っていた。
墓標の数は全部で三つ。
それぞれに綺麗な花が添えられていた。
一番右には、紫色をした気高く、美しい菫の花が・・・
一番左には、純白をした、優しく、気品に溢れる鈴蘭の花が・・・。
そして、中央には黄色をした、小さく可愛らしい菜の花が添えられた。
「あいつらなら、菜々のことも可愛がってくれるだろう。」
墓標の前でアルクがぼそりとつぶやく。
「そうやな・・・。」
否定などできるはずもない。
現世では決して幸せとは言いがたい人生だった菜々・・・。
せめて、向こうでは幸せになってくれることを祈る。
向こうには母親もいる。
・・・菫も鈴蘭もいる。
大丈夫だ・・・あいつらなら、きっと菜々のことも可愛がってくれる。