ネモ的、SFファンタジー短編集
「・・・・金がないねん。我慢しろ。」
ラーメンの汁まで綺麗に飲み干し、海人はポケットからタバコを取り出し、火をつける。
一息。
「コノ前、ザイルト基地での収入があったじゃないか?」
海人たちの商売は『ゴミ拾い』と称される、ジャンク屋。
戦場で使われた兵器や、ギア・ドール(巨大人型兵器の事を指す)の残骸を拾い、売りさばくことで生計を立てているのだ。
「・・・・借金返して終わったと、前に話したはずや。」
どこの国とも取れない独特のイントネーションをした海人の口調。
気にするものは、彼の周りには誰もいない。
「だからって、少しは残して置けよ!このままじゃ俺たち栄養失調でくたばるぞ!」
アルクの怒鳴り声。
「少しも残しておけないほどの借金をしたのは、どこのどいつや!」
同じように怒鳴り声で反論を返す。
だいたい、お前がもう少し倹約してくれれば、俺たちだってまともな食事ができるんだ。
それを、お前が毎回毎回、収入がある事に使い込むから・・・・
「なんだと!」
「やるか?」
立ち上がり、お互いにガンを付け合う二人。
もはや日常茶飯事ともいえる光景。
「あんたたち・・・よくもまぁ、ラーメンしか食べてないくせして、そんな元気が出るわね?」
とめたのは、リビングに入ってきた一人の女性だった。
長い髪につりあがった瞳が特徴の、可愛らしい女性。
名をキラという。
半年前の夏の事件から、彼らと同居するようになったコノ家の中では一番の新参者だ。
もっとも・・・コノ家に序系列なんてものは存在しないのだが・・・。