ネモ的、SFファンタジー短編集
海人たちが住むスラムからギアで飛ばすこと、3時間半。
虎神国ともアトランテ国とも戦争に介入せず、中立を保っている獅子丸シティ。
そこに、その建物は立っていた。
45階建ての超巨大な前面ガラス張りの大きなビル。
大人10人が両手を広げても、まだ余りが出てしまうほどの、巨大な入り口には黒スーツに身を包んだボディガードが常に6人体制でついており、ココを容易に入ることを拒んでいる。
虎神の国王も、アトランテの将軍もこれほど立派なビルに住むことなんてできはしないだろう。
格の違い。
このビルはその存在だけで、それを物語っていた。
そして、そんな巨大なビルの入り口には、その存在を鼓舞する名前が書かれた看板・・・。
『獅子刀組』
・・・・・・・・・世界一のヤクザが住まうのが、このビルの正体であった。
もはや世界の底辺に近いところで暮らしていると思われる海人がここに来たのは、彼女がしていた正午より20分後の、12時20分だった。
遅刻なんてコノ世界ではご法度。
だが、そんなこと一浮浪者の海人が知ったことではない。