ネモ的、SFファンタジー短編集
「・・・・・本来、20分も遅刻して、ただで済むはずが無いんだけどね・・・まぁ相手がアンタじゃ仕方ない。今回だけは、目を瞑ってやるよ。」


 黒ずくめの男に案内されて、たどり着いたのはビルの最上階。


 ビルの壁をすべてくりぬき、一フロアを丸々部屋に改良された、リンババァの部屋は、ヤクザの総元締めと呼ぶにふさわしい、禍々しい、赤じゅうたんに、ドでかいソファー。重厚な社長机に、虎の毛皮に、獣の剥製と・・・・いるだけで吐き気がするぐらい禍々しくて、毒々しい部屋だった。


 まったく・・・これだけ過ごしやすい気温の上に、前面ガラス張りの部屋だからエアコンぐらいつけるな・・・。


 もったいない。


 思わず、コノ部屋に来た瞬間に思ってしまったことだが、口にすることではない。


「来てやっただけでも、ありがたいと思えや。リンババァ。」


 厚化粧で、シワをいうシワを隠した黒スーツ姿の黒髪の長身の女性。


 世界最大のやくざ、獅子刀組組長ことリョ=シリン。


 一般的に見ればその姿を見れば、肝が冷えて三日は立てなくなるのかもしれないが、海人にはそんなこと知ったことではない。


 来るや否や、備え付けのソファーに腰を下ろして、タバコに火をつける。


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