ネモ的、SFファンタジー短編集
「ハハハ・・・ワタシ相手に平気でそんな口を聞けるのも、あんたか、アルクぐらいだよ。まったく、度胸がいいのか・・・それとも、馬鹿なのかね?」
最後の『馬鹿』の部分を口にした瞬間、リンババァの表情が変わる。
柔和だった目が、一瞬にして獣の目に・・・。
今はまだ、許そう。
だが、いつまでもそんな口が聞けると思ってるなよ、小僧・・・。
その目が、物語っていた。
「それで用件はなんや?さっさと言えや。」
しかし、そんな目をされても海人の態度は一向に変わらないどころか、眉一つ動かない。
相変わらず、ソファーに腰をつけたまま、タバコをくわえ、自分の口から真上に上る紫煙を見ているだけだ。
いつも傍にいるはずの、彼女のボディガードたちが一歩後ずさったのに対し、この光景はあまりに異様だった。
「ハンッ・・・相変わらず、面白い男だよ。アンタは・・・。お前ぐらいの男がワタシの部下にも一人は欲しいものだね。」
後ずさり、冷や汗をかいているリンババァの部下。
汗一つかかないどころか、眉一つ動かさない、不浪人海人。
度胸の差は見るからに明らか。
「やめとけや・・・きっと、お前のいうコトなんて絶対に聞かんうえに、寝首を狩られる。」
冗談ではなく本気の言葉。
おそらく自分がこんなババァの下についたら、そういう行動を取るだろうと思っての発言だ。