ネモ的、SFファンタジー短編集

「でもなぁ・・・実際にその猫が近くにいると、菜々ちゃんも危険なんだよ。おちおち家にも帰してやれない・・・、また襲われたらイヤだろう?」


 アルクが分かりやすく説明する。


 あいつらの狙いはこの少女ではなく、自分たちの足元でひたすらミルクを舐め続けている、この灰猫。


 とりあえず、コノ猫さえいなくなれば問題は万事解決なのだが・・・。


「帰る家なんて・・・ないもん・・・。」


 それは少女の小さな言葉。


 だけど、キラにも、アルクにも海人にも、ハッキリと聞き取れた少女の言葉。


「帰る家が・・・ない?」


 キラが聞き返す。


「帰る家なんてないもん・・・仕事中に飛び出してきちゃったんだもん。きっと、もう働かせてくれない。働かせてくれても、きっと物凄い殴られるもん!ワタシの家族はもうエルシャンクだけだもん!」


 途中から声を張り上げて怒鳴る菜々。


 ただ拾っただけの猫を『家族』という少女。


 分別がつかない歳とは思えない。


 どちらかといえば、そうでも言わないと、家族がいない、帰る家がないという現実を受け止められないのだろう・・・・・・・。


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