ネモ的、SFファンタジー短編集
その3
すべては、気まぐれで偶然だった。
アトランテ基地、化学実験施設。
通称『モルモット部隊』
約二週間前まで世にも恐ろしい実験が行われていた施設。
・・・・・・・・すべては気まぐれで、偶然が引き起こしたことだった。
『アトランテが作った細菌兵器に対抗する、ワクチンを作れ』
モルモット部隊隊長、サクラが命じられた内容はそれだけだった。
一月以上そってない茶色い髭があごの周り全体を襲い、一応科学者らしく白衣は着ているものの、ところどころ薄汚れていて、40歳という年齢のわりには、あまりに情けない姿をしている男だった。
細菌兵器だと?
いつの間に・・・そんなものを・・・・。
別に実験施設はモルモット部隊だけではないので、そんなことがあっても不思議ではないのだが、最初に聞いたときは冷や汗が流れたのを覚えている。
念のため、この細菌兵器を作った部隊はどこかと聞いてみたが、返ってきた答えは『今さら全員ロストした部隊のことを聞いてなんになる?』という恐ろしいものだった。
おそらく、自ら作った細菌兵器によって死滅したのだろう。
それほどまでに恐ろしい兵器。
いったい上層部は何を考えているのか・・・?
考えたところで、答えてくれるものはいない。