あ い た く
「ごめんね、むぎちゃん捕っちゃって」
艶のある声が上から響いて"ハッ"と我に返る
「あ、いいですよ」
眉を下げて誤る彼に首を振って答える
彼から"むぎ"を受け取る時に
ふわりと甘い香りが鼻を掠めた
あ…この香り―――
どこかで香った事のあるその芳香を記憶の中から引き出す
そうだ…この香りって
思い出した香りの元を探して彼の首元に視線を流した
「あっ あった」
「え?」
急に呟いたあたしの言葉に彼が不思議そうに首を傾げる