ビタースイート・キス
口に啣(くわ)えた煙草を軽く吸いながら、カチリと音を立た電子ライターから火を譲り受ければ、一気に八百度の熱を持った火種から紫煙が立ち上がる。

ゆらりと空へ上る白は、青の中へと溶けて消えた。




―――どれくらいそうしていたのだろう。

吸い殻がポケハイ一杯になり、煙草も残すところあと一本となった時。
かさりと音を鳴らした草に、今しがた火を点けたばかりの煙草を口から外して後ろを振り向こうとすれば、

「おいコラ、不良娘」

振り向くよりも早く掛けられた声に、びくり、あたしの心が跳ねた。


同い年の男子よりも低く、落ち着いた声。

それでも煙草を揉み消そうとはせず、一向に背後を確認する素振りすら見せようとはしないあたしに、
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