ビタースイート・キス
「お前、こんな所でサボってんじゃねぇよ。受験生だろ、相馬 詩織」
相馬 詩織――と、あたしの名前を呼んだ。
フルネームを覚えていた事に驚きはしたけれど、あたしは平静を装って前を見据えたまま返事をする。
「残念、あたしは就職組だよ」
名前は知っていても、流石にあたしの進路までは知らないらしい。
クラスも違えば学年も違うし、選択授業さえ被る事はないから、それは仕方ない事だと判ってはいても……それを残念だと感じるあたしは間違いなく、この声の主に好意を抱いている。
「少しくらいは動揺しろよ、可愛くねぇ女」
「ははっ、褒め言葉として受け取るわ。――それに不良はお互い様でしょ? まだ授業中だし」
それでも決して素直に伝える事は出来ず、こうしたやり取りは彼がこの学校に来た一年前から続いている。
相馬 詩織――と、あたしの名前を呼んだ。
フルネームを覚えていた事に驚きはしたけれど、あたしは平静を装って前を見据えたまま返事をする。
「残念、あたしは就職組だよ」
名前は知っていても、流石にあたしの進路までは知らないらしい。
クラスも違えば学年も違うし、選択授業さえ被る事はないから、それは仕方ない事だと判ってはいても……それを残念だと感じるあたしは間違いなく、この声の主に好意を抱いている。
「少しくらいは動揺しろよ、可愛くねぇ女」
「ははっ、褒め言葉として受け取るわ。――それに不良はお互い様でしょ? まだ授業中だし」
それでも決して素直に伝える事は出来ず、こうしたやり取りは彼がこの学校に来た一年前から続いている。