ビタースイート・キス
「……知ってるよ、センセ」

動揺を悟られまいとあたしは顔を背け、ゆっくりした口調で言葉を紡(つむ)ぐ。


そんな事、言われるまでもない。

あたしが生徒で……高校生である事は紛れもない事実であり、それは高校を中退したとて未成年に変わりない。


スーツのポケットに両手を突っ込んでいる姿は到底教師には見えぬものの、あたしを見下ろす先生は、紛れもない教師で成人したオトナに違いなく――あたしはそれを痛いくらいに理解している。


「二十歳未満の喫煙は法律で禁じられておりマス」

「…………」

注意を受けて尚も吸い続けるあたしに、煙草のパッケージを指差し、淡々と当然なる事を告げる先生から注がれる視線は冷たい。

けれど、それ以上は何も言わないから諦めたのかと思いきや、
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