ビター チョコレート




「う……そ……」


私は泣きながらも、震える声で、そう一言呟いた。




「嘘じゃない。本当にキミに溺れてる」


彼の細い長い指が、私の涙を拭い、私の目をしっかりと捕えて、強い口調で切り返してきた。




「なのに……、それなのにキミはいつもどこか冷めていて、捕えてどころがなかった。いや、今も……か」


クッ…と彼は軽く笑った。




「遊ばれてるのは、俺の方なんだと思ってたよ……涙を見るまでは」






< 16 / 23 >

この作品をシェア

pagetop