オープンカフェ
 


『お支払いは\3,780でございます。』

『?え?さんぜっ?』

『\3,780でございます…』

小柄な女性店員は、こちらをチラチラ見ながら、繰り返した。


支払いを済ませ、レシートを見ると、パスタ、サンドイッチ、パフェ…と、カフェオレ以外のモノが羅列していた。

未紅のヤツ、自分が到着するまでに、色々食べていたらしい。

(…ってゆーか、食べ過ぎだろっ)

思わず叫びそうになった。


歩きながら、携帯電話を取り出し、未紅にかける。

プルルルル…プルルルル…プルルルル…

数回の呼出し音の後、留守電へ。

それを四回繰り返した。


『着拒かよっ』


今度は思わず口に出してしまった。




……結構、傷付いてるんだけど、自分。何気なくしたように見せて、かなり勇気を出したのに。

失恋のたびに自分を呼び出し、愚痴って愚痴って、ちょっと泣いて…とにかく一方的に喋って騒いで、ひとしきり言い切ったら、すっきりした顔で

『あ〜、全部喋ったらアイツの事なんて
 もうど〜でも良くなっちゃった。
 サンキュー、ハル、きいてくれて。
 じゃまたね〜』

って清々しく帰って行くんだ。


その間、それなりの相槌を打ちながら、僕は内心穏やかではなかった。


僕は未紅がずっと好きだった。


いつかこの呼出しが無くなって、長く寄り添う誰かに出会ってしまうのではないかと。

だから、いつも呼び出される度、『何だ、またかよ』って言いながら、安心したんだ。


でも、いつまでもこのままじゃいけないと思って、勇気を振り絞ったっていうのに…


……やっぱ、駄目なのかな、オレじゃあ。全くもって圏外な男、「ただの友達」止まりなのかな…


あんなに怒るなんて、未紅…


携帯電話を見つめながら、すごく落ち込んできた。


でも!本当、そういう訳にはいかない。

せっかく一歩踏み出したんだから、ここは進まないといけないだろう。

勇気を出して、当たって砕けろ!!だ。


……まぁもうすでに当たって砕けた感はあるけど…


僕は携帯電話を持ち直して、もう一度、未紅に電話をかけた。








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