私の風
海の
キラキラを
辿ると、

そこに一人の
男の人が
立っていた。


こっちを
真っ直ぐに
見ている。


「うーん…。」


…あんまり
じっと見られても
困る。


もしかして
さっきの笑い声
聞いてた?!


そんなに
怪しかったかな?!



急に
恥ずかしくなって、
波にもまれながら
沖に向かって
よろよろ
歩き出す。




波にもまれながら…





あれ?





私と彼の
陸からの距離は
変わらない。



「波に足をとられないの…?」



私だって
サーフィンやる
ぐらいだから、

足の筋肉は
そこらの
女子よりはある。


けど、
それでもやっぱり
浅瀬に近い波は

押したり、
引いたり、
私を自在に操る。



それなのに…



彼の体は波に
全く動じない。







違う。







波が彼を
避けてるんだ。



彼が
よろめかないように、
波がそっと
包み込むように、
彼の周りを
通り過ぎる。





そこだけ波が違う。












心臓が一つ、
とくんと
鳴った。
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