私の風
私と弥月は
帰る時と
食事と
トイレ以外で、

陸にあがる
事はない。


休憩も海の上。


もちろん、
足のつかない
場所でも
そうだ。



この時もそうだ。


ひとしきり
海の上で
泣いていた。


弥月はまた
足を組んで
ボードの上に
座っている。


私が
泣きやむのを
待っていたのか、
話しかけてきた。

「なんなんだ。さっきの発言は。意味が分からないぞ。」

「…だって…。弥月…サーフィン…上手い。」

「はぁ?」

「私下手だから…。」

「ん?なんかよく分からないんだけど。
まぁサーフィンのテクニックだけ見れば俺が上かもな。
けど、それだけだろ。」



何…?



「お前、いつサーフィン始めた?」

「…2年前…。」




おいおいおい…!!


ふざけんなよ。


2年?!


有り得ない…。


天才…ってやつか…。





「だと何なの…?」


我にかえる。


「いや、俺は生まれてから毎日サーフィンしてきたんだ。
16年と2年のテクニックを一緒にされると困る。
けど、サーフィンはそれだけじゃないだろ?」

「…。」

「美しさ、華麗さ、大胆さ、儚さ…
なんかそうゆうのも表現出来て、一流だと俺は思う。」


それを
理解してるからこそ、
ショックを
受けてるのが、
分かんないのかな。












「にぶいなぁ。」
「にぶいなぁ。」
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