私の風

サーフィン

よし。
この辺でいいだろ。


泳ぐのをやめ、
あいつが
来るのを待つ。


「待ってよ~。」


やっと到着した
沙鵺は

俺のボードに
掴まり、
俺を少し睨む。

「早い!!置いてくの禁止!!」

「さっきから禁止事項が多いな。」

「弥月が禁止事項を作らせてるんでしょ?!もう…。」

まだぶつぶつ
言っている沙鵺に
話しかける。

「…なぁ。」

「ん?何?」

「さっきは俺がサーフィン見せたんだから、今度はお前の番だ。」

「何それ?
さっきしたじゃん。
弥月の前に。」

「短すぎ。」

「え~…やだな。」

「何で。」

「しょぼいから…。」



まだ言うか!



「いいからごちゃごちゃ言う前に行け!」

「え~…。じゃああんまり見ないでよ…。」

「いいから。行け。」

「ん~!…がっかりさせても許してね。」

そう言って
ゆっくり
ボードに乗り出す。



…ざわ…



まただ…!

風が突然
命を宿したように

優しく背中を
撫でていく。


その瞬間、

風に流されるように

波にのる。


波の上を
滑って行く。


そして風に
舞いあげられる
かのように、


ふわりと
波を飛び、


そっと
海の表面を
撫でて行く。


目は
あいつだけを
正確に捕らえて
放さない。










その間、

風が
吹き止む事は



一度も

無かった。
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