私の風
「俺、ウーロン。」

「え?!何?!」

敏が慌てる。

「俺をこんなとこまで引っ張ってきやがって。
話が聞きたいなら、金出しな。」

「えぇ?!」

「嫌なら帰るけど。」

「は、払うよ。なんて男だ!そんな男はもてないんだぞ!」

「別にいいよ。ってかちょっとトイレ。席よろしく。」

俺の
勝手な行動に、

素直に
敏はいそいそと
レジに並び出す。


「お前。どんだけ偉いんだよ!」


正が笑い出す。

俺も
口の端だけで
笑ってみせた。

作戦成功。


敏は素直だから
すぐ
だまされる。

そこも
いいとこなんだ
けどな。




正は
敏の姿に
苦笑しつつ、

「俺はコーラ。」

と言って

席をとりに
行ってしまった。

「え?え?」

戸惑う
敏の姿が
可笑しい。


俺たちは
必死で笑いを
こらえていた。





トイレに向かう。






感じたことの
ある風が、





体をなでた。
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