私の風
「あー…わかった。わかったから。騒ぐな。」


このままこいつに
騒がれると、
俺は逆らえなくなる。

全く。

見た目は大人でも
やっぱり中学生だな。


「とりあえず、サーフィンするぞ。」

「うん!」


太陽は
かなり水平線から
遠のいていた。

波に乗る。

今日は
風が強く、
波がかなり高い。


けれど、
俺たちに
そんなものは
関係ない。

自由に
波に乗り、

自由に
海へと
落ちていく。

完全なる
自然体。

はっきり言って、
サーフィンとは
呼べないかも
知れない。

でも、
これが俺たちの
いわゆる
波乗りだった。


「ねぇ弥月。」


不意に
ボードにうつぶせに
なりながら

沙鵺が
話しかけてくる。


「ん。」

「弟ってどんな人?サーフィンやるの?」


…。

めんどくさいけど、
明日会うんだしな…。

一応
話しておくか。


「やるよ。」

「へぇ。弥月に似てる?」

「…どうかな?一応兄弟だからな。」

「ふーん。歳は?」

「俺の一つ下。」

「あ。じゃあ、私の一個上か!」

「そうだな。」

「サーフィンは?うまいの?」

「…それなりにうまいと思う。」

「へぇ。さすが弥月の弟!!」

「なんでさすがなんだよ。多分お前の方がうまいよ。」

「んなばかな!でも、うまそうだなー。
まぁ弥月に比べたら下なんだろうけど!あはは。」


そう言って
沙鵺はケラケラ
笑った。


俺がお前の方が
うまいと言ったのを
冗談だと
思っているらしい。





こいつは…

本当に
学ばない奴だな。


明日、
辰巳のやつ。

びっくりする
だろうな。







こいつのサーフィン…



あんまり人に
見せたくないな…。





ザ…





俺の横で
サーフィンを
再開した彼女が

風と共に
空へと大きく
舞い上がった。
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