太陽はいつも雲の上で照り輝いている
《九章》これが人生ならば…その渦を出る勇気をもて
『今日、二人とも遅くなるから、何かあったら電話して』

この台詞と共に
その波の渦は、静かに忍びよってきた

その波の渦は、出口が誰にもわからない、前が見えない深い闇の世界の様に、僕達を飲み込んでいく……

何かあったら電話して……
この一言が序章で、始まった、病の巣という渦の人生

『あれ、お父から電話かかってきてたわ』

『…風ちゃん…すぐにかけなおしたら…お父さんから電話って、おかしいよ…お父さん、電話なんかしてこないよ普段は……』

『それも、そうやな……』

トッルルルルトッルルルルルル


『あっ!かかってきたわ、お父からもしもしどないしたん』

『母さんが倒れて、救急車で、さっき病院ついた』
『えっ……』

引っ越してから半年が過ぎた頃から、お母は少しずつ、毎日疲れていた
病院も変わり、何度か受診はしていたが……


『わかった直ぐもどる!いつもの病院やな……まゆ、お母倒れて病院やすぐもどるぞ』

『やっぱりお母さん、出しな、しんどそうやったもん』

ここからは、一時間の距離高速を飛ばし、気が付けば車は病院の救急外来に…出て30分の時間しか経っていなかった


『あっお父お母は』

『緊急カテーテルしてもらってる…』

『……心臓か……』

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