太陽はいつも雲の上で照り輝いている
17時15分…

『息子さんでいらっしゃいますね…こちらに』

『お母とまゆは待ってて』
迷路の様な廊下を、足音だけが響く、ひんやりとした空間

数ある角を曲がり、最後に曲がった先に

人工心肺装置が動く先に、肌色をしていない、お父が緑のシーツに赤く染められた中にいた

『まず、モニターを見てください。カテーテルをして診断がつきました。お父様の病名は、乖離性大動脈瘤です。現在、人工心肺装置を、三時間行っておりますが、手術をする状態ではなく、これ以上の救命は無理と判断いたします。』

僕は、その瞬間に、お母を思い出していた
それと同時に、昨日までの、お父の異変に気付かなかった自分を責めた

『先生、心肺装置を止めて、綺麗にしてやってください……僕の大事で大切で、尊敬する父を…綺麗にしてやってください。先生方、本当に、最後まで、父の救命、ありがとうございました。ありがとうございました』

12人のスタッフの方々に、僕は三度頭を下げ、涙をこらえた

短い、廊下をお母とまゆの居る場所に歩いて行かなければならない

お母に、なんと言えば……
か弱く、体が衰弱した、お母になんと言えば……
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