【完】最後のバレンタインチョコ
それから7年が経ち、俺は26歳になっていた。


「夢叶える!」


って沙耶にはでかい口たたいたのに、結局夢はいつまで経っても叶わないまま。


職場で疲れ果てた体に鞭を打ってまでギターの練習をして。


今の俺にはそんなこと、もう意味なんてなかった。



帰りたい……




本当に大事な物はあの町にあったんだ……


沙耶からの手紙が届いて一週間。
ずっと沙耶のことしか考えられなかった。


「他のやつと見合いなんかすんなよ、アホう……」


俺はベッドの上にうつ伏せに転がり込んだ。


沙耶のアホう……
沙耶の……



違う、俺だ。
俺がアホうなんだ。



俺はベッドから起きあがった。
鞄に、カゴの中にただ入れておいただけの洗濯物を適当に詰める。

俺はアパートを飛び出した。


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