恋情
家までの
道のりを月を
眺めながら
歩く。

上を向いて
いると
涙は零れない

「沙絵!」

悠太の声−。

姿は見えないけど
確かに
私の名前を呼ぶ。

誰・・・?
悠太・・・?

私は
またしても
泣きそうになる

泣き顔を
見られたくなくて
私は
その声に
気付かないフリをした

「待てよ!」

私の足は自然と
早足になる

どんどん
足音が
近づいてくる

もうすぐそこ・・・っ

「沙奈!!」

トンっと
肩を叩かれた

振り返ることが
出来ない。

「なんでシカトすんだよ?
てかこんな時間に
何してんの?」

「・・・」

「いい加減返事くらい
しろよな」

ちょっと
呆れてる言いかた

私は
恐る恐る振り返る

顔が見れない

下を向いているから
溜めてた
涙が零れた

「・・・っ!」

「えっ?!
どうしたんだよ?!」

私は俯いて
涙を流すばかり

突然
ぎゅっと
抱き寄せられた

びっくりして
顔を
見上げた

悠太じゃない

ハルさん・・・?

「ハルさん・・・?」

「そうだよ。
宗春だよ。
どうした?」

悠太だと
思いパニックに
なっていた私。
恥ずかしさと安心感が
同時に
押し寄せる
そしてまた
涙を流す。

「ううん。
なんでもないよ。」

「なんでもない
わけないだろ?」

そう言った
ハルさんの表情は
悲しげに見えた。

もう
黙って俯くし
< 8 / 16 >

この作品をシェア

pagetop