愛 玩
prologue.
わたしが小学校に入学する数ヶ月前に、両親が離婚した。


あの時のわたしは、ただ流されるままに日々を過ごしていたけど、何も出来ない自分を責めていたんだと思う。
何も聞けず、何も言えず。


その土地から離れる準備を淡々としている母と、悟られまいといつも笑っていた父。



笑ったり泣いたり出来なくなればいいんだって、ずっと思ってた。


そのほうが楽なんだって。








あの奇妙な世界に迷い込んで抜け出せなくなったわたしが、忘れてたその感情を思い出す毎日になるなんて思わなかった。





だんだんと泣いたり笑ったりが上手く出来る様になった。



心から楽しいと思う毎日に溢れはじめてたから。


これが自分なんだって解り始めて受け止めれる様に…。




わたしがわたしで居ることの出来ないわたしの世界が日常にあったなんて、きっと忘れかけていた。
< 1 / 168 >

この作品をシェア

pagetop