愛 玩
旅行でも楽しんでるかのようなあちらの世界は、わたし世界の侵略の影響はなにひとつ配慮されていなかった。


むしろ家族と離れて働きに行くのは、彼にとっては英雄でもあるかの様な気分なのだ。


彼の心情はすでに旅行に奪われているので、生活に対する思いなどない。
暖かい土地で暮らせる自分が何よりも楽しいのだ。


そして、親子内での自分は最も大切にされていると自負しているのだから、心地良さも増していただろう。
自分を咎めるわたしのような存在が居ないのだから。



こちらはと言えば、なにもしない旦那の代わりに何もしない彼の家族が与えられた。
何も出来ない嫁は子供のお風呂も入れられない。

何よりも彼らが愛する嫁なので、わたしが躾ようものなら避難を浴びる。



『出来るからって自慢するな』と言う思考なのだ。

自慢と受け取られるのならわたしにも非があるのかもしれないが、子供を産んだ以上、育児はわたしの責任で当たり前の事しか出来ていない。時には当たり前以下だと反省もした。



もっと子供に出来る事があると模索していたのだから自慢するとすれば、子供たちへの愛情くらいだった。


彼らが愛する嫁は家事全般もしなくて良かった。
妊婦だからしょうがないのだそうだ。
わたしは彼らに仕える者として、意見は一切聞き入れて頂くわけにはいかない。


毎日、わたしが仕事に行き彼女に留守番をしていただく。



彼女の娘の通園は、わたしが自分の子の「ついで」に済ませ、帰宅してご飯を作る。
彼女は毎日、大量のマンガという読書をし出産に備える。
下着をわたしが甲斐甲斐しく「ついで」に洗濯し、子供たちを「ついで」にお風呂に入れる。

買い物の際には大事な嫁にお伺いを立て、「ついで」に支払いし、ついでに大量のオムツを運ぶ。




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