愛 玩
育児に追われているのだけが楽しくて…



彼は、こともあろうに、自分の弟とわたしが『デキテイル』と疑う。

わたしが、たった一言、彼のおかしな言動を指摘し弟を庇ったことだけが原因だったとあとで知った。



丸1ヶ月、同じ家に居ながらわたしを徹底的に無視し続けた。

わたしは意味もわからなくただロボットの様に彼の身の回りの世話をし、彼の家族の身の回りの世話をした。

少なからず食べさせて貰っている以上、すべき事はするものだと思っていた。



毎日、ご飯を作り洗濯をするだけのわたしの位置。



姑の見栄のためだけに駆り出される団らん。

自分たちに染まらない靡かないわたしは、相当イヤな嫁だっただろう。



彼がわたしを居ないように扱ったのならば、そうするよりなかった。



姑からは言わなくても物だけは与えられた。

『こんなに大事にしてるのに…』という心境だったはずだ。




でもそれは、見栄っぱりな趣味なだけで、わたしは気付いていたし然程喜びもしない。可愛くなくて陰口を叩いているのも、黙認していた。



そんな日常でも、わたしは、彼らの苦手な人たちと仲良くなっていく。
『人』と話せる機会があることは、幸いだったのだから、楽しくて笑った。





彼らには最大級の屈辱と感じた様子で表面上はわたしを悪く言えなくなってしまった。


非難されることにはとても敏感なのが特性だった。



そんなわたしを彼は、男好きな行動と変換しインプットしたらしい。
女性とも仲良くなれたのに…。


異性と話す事全てに憤慨し、直接わたしには何も言わず人前でその感情を露にする。





わたしは、話す事をやめた…。





広がりかけた世界がまた狭くなっていく…。

耐えられたのは息子の存在だけで、それだけが唯一無二の大きくて小さな幸せ。毎日、息子が笑ってるという日常に満足するしかない。



どんどん子育てに没頭し、子育てに口を出してくる彼らに、わたしは無表情で対応した。



ますます、可愛くない嫁になってゆく自分も解っていた。





わたしがお人形になった。



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