愛 玩
娘が産まれた頃には宴も全く無くなっていた。

出産祝いのご祝儀袋の中身も無かった。



空の封筒ばかり渡される、考えるまでもない現状に何も感じないようにした。


彼の父親の会社は、その頃はもう傾きはじめていたのだ。

彼も仕事という日がほとんど無く、たまに仕事をし毎日両親と一緒に『パチンコに稼ぎに行って。』いた。

そんな束の間の彼が居ない時間に幸せを見つける程度でわたしは、『それでも』満足しているしかなかった。
新生児と幼児を抱えて行動し出す体力が残されていない。
まだ、彼がいつか気付くと期待している弱い自分にイライラした。




彼は気まぐれで帰宅しては、わたしの作ったご飯を食べ、娘をお風呂も入れた事もなく、息子を散歩に連れて行くわけでもなく、弟の娘を溺愛し、身重な弟の嫁を気遣った。



わたしは笑わない。
それだけが唯一の反抗で、唯一保てる方法だ。




それしか無かった。


< 83 / 168 >

この作品をシェア

pagetop