雪となつ
出会いは14の時。なつがまだ水面下でひっそりと息をしていた時。「彼女」がまだ「彼」であった時。
「ソレ可愛いね」教室の一番はじでひっそりと本を読んでいた春の昼さがり。 いきなり背後から声をかけられた。自分の世界にどっぷりハマっていたなつは、自分に話しかけられたという認識が遅く返事をするのが遅れた。
「あ…りがと」 気づいて返事をするまでに10秒。そしてソレが何を示すのか気づくまでに10秒。ソレとはなつの長い黒髪に留められたヘアゴムで、シルバーの花に緑のガラス玉が乗ったものだ。なつにはそんな所があった。 ぼっとしている、と人によく言われる。この間のびした空気で相手をイラつかせる事も多々ある。しかし何より痛かったのは無視されてる、と思わせてしまう時だ。組替えがあって一週間。クラスメイト達は自分の位置を確立しようと、必死におしゃべりと自己アピールを繰り返していのにも関わらず、なつが一人で読者にふける原因もそこにある。始めのうちこそ何人かしゃべりかけてきたが、空気が落ち着てしまった今ではそれもない。1年生の時もそうだった。間ぬけだな…と自分でも思う。けれど どうしても
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