ふたりで、生きよう
「豪ちゃん、まだかなー。もう7時半過ぎちゃってるよ」
時計は7時40分を指していた。
未だ待ち人は現れない。
私が待ちくたびれてガードレールに腰掛け、携帯を開いた時、ポカッと頭に軽い痛みを感じた。
顔を上げるとそこには迷惑そうな顔をした私の待ち望んだ人。
「豪ちゃん!」
私が勢いよく立ち上がると豪ちゃんは困ったように首筋を掻くと大きく溜め息を吐いた。
「ったく、何やってんだよ。毎日毎日飽きもせず…」
「だって豪ちゃんの車に乗るのが楽しみなんだもん!」
「だからってなぁ…」
ふ、とある疑問が浮かんだ。
「ねぇ豪ちゃん。入口から出て来なかったよね?どこから出て来たの?」
「あぁ。クライアントの会社に行ってたんだよ。本当は直帰する予定だったのに…」
豪ちゃんは迷惑そうに顔を歪めた。
よく見ると路肩に豪ちゃんの愛車が停車されていた。
私はそれを見て一気に頬を緩めた。
「ありがとう!」
「は?」
急に礼を言った私に怪訝そうな顔をした豪ちゃんはまた困ったように眉を下げて親指で車を指した。
「乗ってもいいの?」
「ダメって言っても乗るんだろ。早く乗れ、駐禁取られる」
ぶっきらぼうに言った豪ちゃんにまた頬を緩めた私は豪ちゃんの車に向かって走り出した。